5.21「第8回憲法問題連続講座」を開催しました。
掲載日:2016.05.21
戦争をさせない北海道委員会は、5月21日に、ホテルポールスターにて、「第8回憲法問題連続講座」を行い、200人が参加した。
安倍首相は在任中の憲法「改正」をめざし、自然災害への対策を名目に「国民の理解を得やすい」として「緊急事態条項」を盛り込む「お試し改憲」を行おうしている。戦争や内乱、恐慌や大規模な自然災害などの緊急事態の際、通常では認められない非常措置を首相がとることを認めるのが「緊急事態条項」で、導入すると自然災害などに迅速に対処できるとしているが、真の導入の意図は何かを分かりやすく解説した講義に、参加者は熱心に耳を傾けていた。
主催者挨拶で、北海道平和運動フォーラムの清末愛砂代表は、「2011年東日本大震災発生以降、状況が大きく変わった。災害対策を名目に、国家緊急権が必要だという主張が国会内で明確に出されるようになってきた。3月29日に安保法制が施行された現在、緊急事態条項盛り込みを含む、改憲に向けて猛烈な動きを見せている。改憲の動きに随時敏感になり、跳ね除ける意志を表明していかねばならない。また海外の事例、日本の過去の事例を見ると、軍事態勢と緊急事態宣言は大きな関わりを有している。日本でも再び同じ状況が起こりうる。そうならないために、大日本帝国時代の反省を次世代に継承していくことが重要。継承の意義を改めて深く考えて頂きたい」と挨拶した。
集会の講師は、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)で、「ホントに必要? お試し改憲『緊急事態条項』」と題して講演があった。
冒頭、「選挙権を18歳に引き下げる話。2007年国民投票法の際に、自民党は反対していたが、今は押せ押せ。何故か。今は18歳選挙権まで下げた方が有利だと調査結果から出ているから。今夏の選挙、240万人の若者が参加することにより、自民党にとって有利な結果になるだろうと。それでいいのかというのは主権者である私たちが考えねばならないこと。考える一つの材料として、今日の演題、緊急事態条項がある」と切り出した。
【憲法をめぐる政治状況】では、「万が一国民投票で負けたら、政治家にも打撃。憲法改正もそうだが、国民投票にかけ否決されたら、安倍さんも直ちにやめることになる。少なくとも10年位は、国民投票という議論は出てこないだろう。それが安倍さんとしても怖い。安倍自民党の真の憲法改正の狙いは憲法9条だが、しかし、憲法9条を国民投票にかけて勝てる自信がない。
そこで目をつけたのが緊急事態条項。緊急事態条項とは何か。戦争・内乱・恐慌や大規模な自然災害などの緊急事態の際、通常は認められない非常措置を国家機関、とくに首相がとる権限。余談だが、フランスでは国民が憲法、憲法なんていう議論になるのは余程政治がおかしい証拠だと言われる。何故か?憲法は政治家が従いなさいという規範。それが国民間で議論されるというのはおかしな話となる。憲法は個人の自由、権利を守るために様々な規定を置いている。それを政治家に守らせるのが憲法。その立憲主義の制約を緊急事態の際に解除すること。
結論から言うと、緊急事態条項は、憲法9条を変えたい、しかし憲法を変えられない、ではお試し改憲的に緊急事態条項を盛り込もうと。しかし、97年以降の自民党の議論を見ていると、海外での武力行使可能な国づくりの一環である」と説明した。
【緊急事態条項の問題点】では、「目的は自然災害よりも戦争、内乱。改憲草案98条1項では、内閣総理大臣は我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認める時は、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。となっている。これを読んだ時、法律というのは、重要な物から前に並べる。先ず武力攻撃、内乱、自然災害の順で重要だと定めていることが明らか。国民と国家という文言でも、自民党改憲草案では必ず国家が前。どちらが重要かという点で明らか。
内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。いわゆるナチスの独裁を可能にした全権委任法と文言が似ている。要するに、内閣が法律を作ることが可能になるということ。どうでしょう、私が法律を作ります、私が適用します、なんでも出来てしまいますよね。自民党としては、いざという時、戦争に協力する体制を作りたいということ」と解説。
【緊急事態条項がないと自然災害に対応できない?】では、「災害対策基本法等、今の法律で十分対応できる。もしかしたら、法改正も不要かもしれないというのは、阪神淡路大震災でも市長が迅速に対応したところは被害が少なかった。淡路島では即死者は無理だが、消防団や警察の迅速な活動でほとんど死者を出さなかった。実際に現場で「緊急事態条項がないので対応できません」という人は一人も居ないだろう。現場で緊急事態条項の必要性を考える人はほとんどいない」と説明があった。
【今度、どうするか。「戦争できる国づくり」を認めないために】では、「主権者として、今のこうした政治を考えていかねばならない。万が一参議院選挙で3分の2の議席を取られるような事態になれば、憲法改正は現実味を帯び、国民の生活、教育環境、保育、労働、皆悪化する。よく考えねば。将来の世代を考えた時、このまま続いていいのかを、良く考え行動していこう」と結んだ。
閉会挨拶で、北星学園大学教授の岩本一郎さんは「緊急事態条項が発動されるのは、戦争や内乱などの非常事態。非常事態の対極にあるのが日常。学生や若者の話を聞くと、戦争は嫌だと言う。多くの人が憎しみ合い、傷つけ合い、殺し合い、命を落としていく。戦争における最大の害悪。それに加え、当たり前の日常が壊れてしまう。オシャレをし、好きな人と出かけ、おいしい物を食べ、他愛もなく笑うといった当たり前の日常が壊れることを、若者たちは恐れている。日本の日常は世界の貧困の中で苦しんでいる人達から見たら、贅沢な物。この許された贅沢な日常を守る覚悟こそ、戦争とテロを寄せつけない強い民主的な社会を作り、守ることに繋がると私は信じる。私たちが日常当たり前としている事を続けていくために、共にがんばりましょう」と挨拶した。
参加者からは、「緊急事態条項について要点を捉えることができ、とても参考になった」との感想をいただいた。