ブックレット『日本社会は本当にこれでいいのか?安倍政権の7年を問う!』のご紹介


掲載日:2020.12.11

 2019年11月、函館市で「平和・自由・人権 すべての生命を尊重する社会を 憲法理念の実現をめざす第56回大会」(第56回護憲大会)が開催されました。
 メイン企画のシンポジウム「日本社会は本当にこれでいいのか? 安倍政権の7年を問う!」では、清末愛砂代表(室蘭工業大学大学院准教授)をはじめ、雨宮処凛さん(作家・活動家)、中野麻美さん(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)からそれぞれ重要な提起をしていただきました。
 そのシンポジウムの内容をブックレットとしてまとめたものが刊行されましたのでご紹介します。

   

著者:清末愛砂(室蘭工業大学大学院准教授)
   雨宮処凛(作家・活動家)
   中野麻美(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)
発行:フォーラム平和・人権・環境
編者:公益社団法人北海道地方自治研究所
発売:八月書館
内容:A5判並製・64ページ
定価:本体700円+税


本書の購入をご希望される方は、書店にお問い合わせください。

内 容

 バブル崩壊からの失われた20年で、終身雇用を基本にした日本型の雇用制度が崩壊し、非正規労働者が増加するなか、安倍政権はその当初から「再チャレンジ」を掲げて自己努力・自己責任を人々に強いてきました。
 シンポジウムは、安倍政権が「いのち」をいかにないがしろにしてきたのか、女性、格差、差別、労働、戦争の問題をめぐる3人の言葉から、現在の課題を明らかにします。
 シングルマザーは貧困ラインギリギリか、まさに貧困そのものの生活を強いられています。貧困と格差に対する問題意識が高まる一方で、安倍政権で顕著になった「自己責任論」によって、雨宮さんが指摘する「生きづらい世代」は、「生産性のない人を生かすほど財政上の余力はない」とする「命の選別」がすすむ社会に放り出されています。多くの人々が競争社会の中で追い詰められ、雨宮さんが言うように、社会には「不寛容」があふれています。
 安倍政権は、そんなきびしい状況のなか、「働き方改革」を強行しました。中野麻美さんは、人間と労働を国家と経済の道具にすることだと指摘しています。「戦時体制の究極の姿は人間を道具化することであり、人間を序列化していきます」。中野さんの言葉は、まさに雨宮さんの指摘する社会の現状を、戦争法を強行した安倍政権の政策として明らかにしていきます。
 LGBTには生産性がないなど繰り返す杉田水脈自民党衆議院議員は、選択的夫婦別姓の議論に「なら結婚しなくていい」と発言し、女性が輝けなくなったのは伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等にあると、日本国憲法24条を批判するなど、日本の右派は、憲法24条の「家庭生活における個人の尊厳」と「両性の本質的平等」を否定し、戦前の家父長制の家族制度を礼賛します。清末さんは「憲法24条と9条(戦争の放棄)を両輪に、13条(個人の尊厳)、14条(法の下の平等)、25条(生存権)を総合的に捉えた先に、非軍事、非暴力の、人間の連帯に基づく社会をつくることができる」と指摘しました。そして、本書巻末に掲載した今年10月執筆の「シンポジウムから1年たって──闘いはこれから」の中で、安倍辞任を受けた菅政権の本質をえぐり出し、希望への道筋を描いています。