6.12 金子 勝講演会「TPPとアベノミクス」を開催


掲載日:2016.06.12

北海道平和運動フォーラム・TPPを考える市民の会は、6月12日に、ホテルポールスターにて、「金子勝講演会」を行い、400人が参加した。

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政府・与党は、「環太平洋連携協定(TPP)」の承認案と関連法案の第190通常国会での成立を断念した。衆院TPP特別委員会の審議では、政府がTPPの交渉資料を黒塗りで開示するなど協定が持つ極端な秘密体質や、コメ、牛肉・豚肉など重要5農産物の関税維持に反する疑いも一層強まっている。講演では、日本経済そのものを破壊させるTPPやアベノミクスの問題点をわかりやすく講義してもらった。

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主催者挨拶で、TPPを考える市民の会共同の中原准一・酪農学園大名誉教授は、「TPPは、署名後2年経って参加6カ国が揃い、その6カ国のGDPを足すと12カ国のGDP草案の85%以上に達成したら見切り発車させようという乱暴な話。しかし、そんなに簡単にいかせないぞということを強調したい。日米いずれの一カ国でも批准が出来なければ発行できないことになっているので、阻止、潰えさせていきたいと考える。国論を二分し反対する世論がある場合、政府は情報開示し、国民に説得を誠実に行わねばならない。7月10日投票の参院選。政府与党の争点隠しを厳しく正し、TPP反対、批准阻止の闘いを進めていこう」と挨拶した。

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集会の講師は、金子勝さん(慶應義塾大学教授)で、「TPPとアベノミクス」~地域から農業を再生すると題して講演があった。

冒頭、「安倍さんの政治の特色。最初に言っておくべきは『息を吐くように嘘をつく』政治手法としては、デマゴーグ(※日本においては主に、意図的に虚偽の情報を流し、嘘をついて人を扇動しようとするさまを指す – Wikipediaより)政治で、議会制民主主義や選挙を意味のないものにしていく。次々出てくる嘘を呆然として見ている状態。今回の消費税増税再延期の際に、色々理由づけし、再延期をしようとしていたが、嘘がばれてきてサミットでリーマンショック並みだと発言したら、世界中の大手メディアからサミットを国際政治に利用するなと猛烈な批判を浴びると、『新しい判断』と言いだした。とにかくめちゃくちゃ」と批判した。

また、「検証させないために、自分の都合に良い数字だけを並べる。三代目は身上をつぶすと言われるが、周囲が社長、社長とおだてて、こんないい数字があります!と官僚が持ってくると、そのままその数字を言う。特に、有効求人倍率。26年振りの水準、景気が良いと報道しているが、見ると頭がくらくらする。有効求人倍率は割り算。分子が、企業が求人している数。分母が職を求めている求職者数。グラフを見ると求人数はリーマンショック後伸び率が落ちている。地方は軒並み下がって、東京だけが上がっている。地方は人口減少と若者の職がないので人口流出が起こっている」と続けた。

DSC_0805TPPについて、「TPPの中で5品目はダメでしょう。恒久的な対策を打たないと7年後の再協議の時にはさらに一枚剥がされる。EPAやETAは除外規定がある。関税の引き下げ除外規定がある。TPPはそれがない。7年ごとに協議していくから裸にされるまで永遠に続く。豚や牛、どんどん安いのが入ってきて、豚肉飼育業者がいなくなるとどうなるか。飼料米は誰が食べるのか。人間が食べることになるだろう。さっきの話、肉牛安いのが入ってきたらホルスタインに代わるという話と同じで、みんな連動して波及するのでみんな苦しくなる。赤字補てんの割合を9割にするというが、赤字になるまで何の対策もしないのかという話。一個一個バラバラに見ずに、産業が成り立っているあり方を見ていくと、対策もパー、大規模化すると言っても、規模が違う。耕作放棄地を無くすと言っているが、耕作放棄地に行ったことのない人が計画を立てている。行けば皆、中山間地。機械が入らないような場所をまとめようとしてもまとまらない。真っ平らで大型機で耕作するなら効率が上がるが、日本では無理。農林業センサス2015という統計があるが、200万あった農家が10年間で140万になった。1/3減っている。担い手の63%が65歳以上。あと10年で農業は確実に滅びる。農業は連動して動くので、TPPの影響は思っている以上に深刻で、対策と呼ばれているものは殆ど小学生並みの騙しになっている。TPPは農業が滅びるための引導になる。7年後再協議した時に関税ゼロ、どうせうちの国、農業ないし、いいわ!みたいな話になるかもしれない」と事の深刻さを訴えた。

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「我々が考えねばならないのは、いかに地域レベルで、雇用、産業、社会システムを未来にどういう形で作っていくのかというオルタナティブ(既存のものにとって変わる新しいもの)を提供していくことが、今、最も求められている。生活を成り立たせるために、こういう道もあるんだと100年に一度の危機を突きぬけていけるかもしれないと考えると、ワクワクして、皆さんが動き出してくれたら、社会は大きな変動をしながら、道をひらくことが出来るはずだ」と結んだ。

質疑応答の後、閉会挨拶で、北海道平和運動フォーラムの長田秀樹・事務局長は、「金子先生は本日、首相のことを、『息を吐くように嘘をつく』と、痛快に批判をされました。『アベノミクスを嘘ど真ん中』と。正にその通りだと思う。しかし、安倍首相は『道半ばだ』と言う。私は『嘘半ば』だと思っている。これからもどんどん嘘をつくでしょう。しかし、私たちはもう騙されてはいけない。TPPしかり、最終的に争点を隠したまま憲法を変えるでしょう。こういった政権はNOと言わねば。政治を変える。それは市民が変える。本日の講演を明日からの運動に生かしていきましょう」と挨拶し、集会を締めくくった。