松元 剛さん講演 辺野古新基地建設反対!「戦争法」廃止! 12.8北海道集会を開催
掲載日:2015.12.08
辺野古新基地建設反対! 「戦争法」廃止!!をテーマに、12.8北海道集会を12月8日、自治労会館にて開催した。500人が参加し、松元剛さんの講演を熱心に聞いた。主催は、北海道平和運動フォーラム、12.8北海道集会実行委員会、戦争をさせない北海道委員会。
北海道平和運動フォーラムの江本秀春代表が「沢山の方にお集まり頂き、関心の高さが示されている。今日のテーマ、辺野古新基地建設反対に対し、安倍政権は訴訟をもって臨んだ。国民の反対の声を無視した安保法制強行や、沖縄県民の声を聞かず辺野古新基地建設を強行しようとしている安倍強権政権の在り様は、腹立たしいを越え、戦前の暗い時代へ戻るのではないかと恐ろしさを感じる。松元さんのお話を聞き、改めて民主主義の危機を考えたいと思う。今日の集会を通じ、安保法制の廃止に向け辺野古新基地建設反対の取り組みを強化する。皆さんと共に粘り強く闘い抜いていこうと思う」と、主催者を代表してあいさつした。
講師に、松元剛さん(琉球新報 編集局次長兼報道本部長兼NIE推進室長、論説委員)をお招きし、「沖縄から見る民主主義-辺野古新基地と安保法制-」と題して講演があった。
「ここ最近、琉球新報のベテラン記者たち、東京報道部のメンバーも、色んな場で色んな市民団体の皆さんフォーラムやセンター、弁護士会、大学で安全保障のジャーナリズムを勉強されている先生方などに招かれることが非常に増えている。それは、沖縄の状況があまりにも酷い、安倍政権の中の強権的、地方自治を押しつぶすような政権はかつてあっただろうかと。そういう危機感を持つ市民が増えていることの表れかと思う」と、最近の状況にふれた。
「今年6月『沖縄の新聞二紙は潰さなあかん』という発言。安倍政権に近い安倍チルドレンや、シンパシーを持っている当選回数の少ない議員を中心とした集まりの中で出た発言。百田さんの発言以外にも、安倍政権の安保法制の考え方に異を唱えるマスコミには広告を出さないよう経済界に要請すべきであるとか、そういうマスコミは懲らしめろとか、認識のない、言論を弾圧し政権の言うことに従えという議員が与党の中で巾を利かせていることが、図らずも露見した。琉球新報、沖縄タイムスの2紙が標的になった」と、全国で話題になった件について語った。
そして、「緊迫した沖縄の中で我々は沖縄県民の立場に立ち報道しているつもり。戦後、米軍統治下の中で圧倒的に強い権力者が居て、それに人権を侵害され苦しんでいる県民の声を少しでも届けるという紙面づくりを続けて来たが、沖縄の新聞が偏向していることのゆえんになっているのかもしれないが、偏向しているのではなく、権力者に弱い立場の県民の声を届けるのが沖縄の新聞の役割だと、それを全うしている、権力のバランスを考慮したうえで報道している。偏向しているということは、ずっと言われ続けてきたが、米軍基地の問題で、政府が考えている事が中々上手くいかない、沖縄の強固な反対民意によって、進めようとしていることが上手く行かなければいかなくなるほど、県民の民意がそうなっているのはマスコミのせいだ。沖縄県民は新聞にマインドコントロールされているのだ」と、政権の逆恨みを強く批判した。
「去年の選挙では、1月の名護市長選挙、現職の稲嶺進さんが名護ではかつてない大差で、辺野古推進派をやぶった。9月の名護市議会選挙でも絶対安定多数を与党が維持し、知事選で翁長さんが勝ち、翌年の衆院選では4つの選挙区で全て推進派が選挙区で敗れる結果となった。間接民主主義の民意、選挙結果を背に受け、翁長知事が奮闘しているということです。もちろん、地元メディアだから、翁長県政におかしな問題があれば批判もしますが、辺野古新基地については、世論調査の結果は77%が支持。国との全面対決になること止むなしということで、知事の行政行為を後押しすると。地方自治の観点からすると、国とどれだけ話し合っても相いれない問題があると、その行為を、アメリカとの約束に基づきやっているという安倍政権。当事者である民意は選挙でも世論調査でも明らかなのに。知事にとっては引くことが出来ない。引いてしまうと自らの尊厳が棄損してしまうと。それを一番自覚しているのが知事だと思う」と、翁長知事の思いを解説した。
また「翁長さんが裁判を始めた日は、早朝から1200名もの人がゲート前に集まった。こういう現象も、かつてないことだと思う。ゲート前、本土で騒動されるのは、機動隊が隊列を組んで、それと対峙して、ごぼう抜きにされたりというような苛烈な厳しい警備が報道されていると思うが、一日いると、唄の時間だったり、踊りを踊ったり、沖縄民謡が流れたり。沖縄のうちなーぐちが、ふんだんに登場する。文化と歴史の底力が凝縮されたかたちで辺野古の運動が成り立っている。これは本土になかなか伝わっていないところだと思う。安倍政権のやり方に対しては、文化や言葉の力も含め、沖縄の民意が総力で頑張っていると。私は27年間基地担当をしてきたが、かつてない民意の変化だと思う」と、私たちが情報として得られていない事について、語った。
「差別を大きく照らし出したのが、2011年11月の田中聡沖縄防衛局長による、辺野古への移設する際の環境アセスメントの評価書が中々提出されないのかというオフレコの懇談会の中で琉球新報の記者が質問した。その際、田中さんは『犯す前に、これから犯しますよと言いますか』と発言をした。これは日米合意に基づき、日本の安全保障問題の中で最大の懸案であると、政府が位置付けている辺野古の移設を性的暴行になぞらえるという許しがたい暴言。許しがたい発言だと思いますと、朝刊で書くべきだと思いますと。『オフレコか?』と聞くと、そうです、と。そして、俺に3分くれと言って、私、政治部長でしたので考えました。県民読者に伝えるべきだと、このような暴言を政権当局者の沖縄問題を担当する最前線に立つ沖縄防衛局長が発言したということは、政権体質を表すものだと。沖縄はずっと日本の安全保障のために、米軍基地を重く抱え続ける宿命にあるんだと、その運命から逃れられないんだという沖縄に対する差別を帯びた侮辱を帯びた言葉だったと。私たち、この問題を報道していくうえでの背景事情として押えておくだけでは、県民読者に対する背信行為だと考えた。当時、直属の上司だった本部長に確認すると、本部長も激怒し、防衛局にどんな嫌がらせをされても、出禁をくらっても書こうと。腹をくくって書いた結果、朝刊が出た途端、琉球新報を引用して、各社報道し、午前11時には田中さんの更迭が固まっていたと。それくらい、様々な形で、琉球新報に二日間で100本以上の電話があった。本土からお叱りの電話もあったが、数本だけ。ほとんどがよく書いたと。当時の仲井眞知事も、『この話は口が汚れる』という言葉で批判した」と、田中局長の更迭問題にふれ、「知事選に入るうえで、防衛局長の暴言や国務省のケビン・メア総領事を務めた人が『沖縄はゆすりの名人』という暴言。日米の防衛官僚のこういう考え、見立てを激しく批判し、県議会でも決議して更迭に追い込む。民意の強さを獲得したんだというターニングポイントだった」と熱く訴えた。
今後の辺野古の問題では、「来月1月24日に宜野湾市長選挙がある。自民党の現職が二期目に挑む。そこに翁長さんを推したオール沖縄勢力が擁立した、新基地建設反対の新人が挑む構図。沖縄は二期目が強いという感じがあり現職が有力なのではという話だったが、段々互角のデットヒート状態になっているとのこと。それを把握している安倍政権は危機感を持っていて、色んなテコ入れを図っている。そのうちの一つが、普天間飛行場の4haを返還するという話。全国紙は安倍政権が懸案事項を少し前進させたとニュアンス報道が多かったが、地元2紙は辛口だった。25年前に同意しているじゃないかと。もう一点、沖縄防衛局の職員が地主に対する説明会の中で、返還されるところが確定しているのに、官房長官が仰々しく会見を行った。政治ショーです。これは宜野湾の選挙を支援するための紛れもない選挙対策に近い。仮に裁判で勝ったとしても、宜野湾の選挙で負ければ、安倍政権は求心力を失うことになる。重大な選挙になるので注目してほしい」。
また「辺野古で文化財が見つかった。中国との交易の証拠になる御影石、土器、石器。これが埋め立て工事をするための土砂の中、キャンプシュワブの浜から見つかっている。ということは、その下まで発掘調査をせねばならない。名護市は遺跡認定をしたいと県の教育委員会に申し出るという決断をしている。そうすると文化財保護法により、あの一帯が工事できなくなる。この質問を菅さんや中谷さんにすると、物凄く嫌な顔をする。何故かというと、法治国家だとずっと言ってきた人たちだから。文化財保護法も法律です。この文化財の問題含め、ありとあらゆる手段で止めるすべはあるんだと、裁判はうち一つの手段だとしている。この推移も年明けまでに大きな動きがでてくると思うので注視して頂きたい」と、語った。
最後に、作家の佐藤勝さんの絶妙なたとえ話を、少し膨らませ、次のように話された。
「A学院という高校に沖縄くんという生徒がいる。クラス全員でトイレ掃除は誰がするかということを決めると、月から金まで沖縄くんがトイレ掃除をすると。沖縄くんは凄く嫌がった。4、5人の生徒が、沖縄くん可哀想だから交代でやろうよと言っても、他の生徒は中々耳を貸さない。そんな中、ライバルのB学院が急速に学力を伸ばし、進学校のA学院が焦って、B学院に対抗するために、土曜も出て貰って授業をすると。土曜のトイレ掃除は誰がするかという話になりクラスで図ったら結局、沖縄くんが嫌がっているけど、沖縄くんにという話になる。なぜなら、沖縄くんの席が一番トイレに近いから。もう一つは、他の生徒はトイレ掃除の仕方がよくわからないからと」
「これは、今の辺野古問題を象徴しているたとえ話ではないかと思う。B学院は、急速に力を伸ばしている中国に当てはめて考えればわかり易い。正に差別、いじめの構図そのもの。この話を本土から来る修学旅行生にすると、非常にうなずいてくれます。ずっとトイレ掃除をさせられている沖縄くんでいいのかと。非常に根源的な民主主義、沖縄の民意が反映される形で、この問題を解決すること。これが日本の民主主義が成熟し生きている事を表す、地方自治がかろうじて崩壊せずに残っていく。沖縄のことは沖縄が決めるという自己決定権、沖縄が本土社会に対して絶望しない共感をかろうじて踏みとどまってもつことが出来る、唯一の解決策では。今後も沖縄の厳しい状況に目を向けて頂き、日本の民主主義のためにも、沖縄の問題が沖縄の民意に沿って解決されることを、一県民として、一新聞記者として、がんばっていきます。皆さん、共にがんばりましょう」と講演を結んだ。
閉会挨拶で、林炳澤・12.8北海道集会実行委員会 共同代表は、「今年の戦争法案に対し、多くの人々が反対した。これは市民革命ではないのかという表現がされていた。戦後において十分でなかった民主主義というものを市民の手によって民主化をしていく、本当の民主主義国家を作り上げると。私たちはそのような歴史的段階にあるのではないか。来年は参院選がある。それほど遠くない段階で衆議院選挙もある。こうした選挙によって、戦争法を強行してきた勢力、沖縄に差別と軍事基地を押し付け、恥ずかしいと思ってこなかった勢力らを減少させねばならない。真っ当な考え方を持った、真っ当な人々による社会を作り上げていくことを確認しよう」と訴え、本集会を締めくくった。