半田滋さん 戦争法粉砕~自衛隊を軍隊にさせない闘い 講演会を開催


掲載日:2015.10.23

戦争をさせない北海道委員会は「戦争をさせない北海道講演会」を10月23日に、自治労会館にて開催した。350人が参加し、半田滋さんの講演を熱心に聞いた。

来年の参院選で、自公政権の暴走を止めようとあいさつする結城・小樽商大名誉教授

来年の参院選で、自公政権の暴走を止めようとあいさつする結城・小樽商大名誉教授

戦争をさせない北海道委員会呼びかけ人の結城洋一郎・小樽商科大学名誉教授が「来年の参院選で自公政権の暴走を止める為、そして戦争法の完全廃止に向け、野党共闘が実現されなければならないし、有権者も実現するため努力せねばならない。北海道委員会も努力の一環として、本講演会を開催する運びとなった。本日の演題が示すように戦争法を粉砕する闘いを続けていこう」と、主催者を代表してあいさつした。

講演には講師に、東京新聞論説委員兼編集委員の半田滋さんが、「戦争法粉砕 自衛隊を軍隊にさせない闘い」と、題して講演した。

第一次安倍政権がやったことについて「今回の法律が適用され、その下で活動する可能性が出てきているのが北海道の部隊。安保法は9月に成立したが、施行が来年3月。現在海外で自衛隊が活動しているのが2か所。1つはアフリカ、南スーダン。国連平和維持活動、PKO。自衛隊が20年以上続けてきた国連への協力活動。道路直しや、橋を直したり。いわゆる国づくり、人助け。戦うために行っているのではなく、インフラ整備を目的として活動している。2つめにソマリア沖の海賊対処。アフリカには破綻国家となったソマリアがある。そこの漁民が海賊になり、近くを通る商船を襲い、誘拐、身代金を要求すると。世界中の軍隊がそこに参加し、そこを通る船を守ることにより海賊が寄り付かないと。この2つの中身が変わるのではと言われている」と、現活動に今回の法律が適用された場合、問題が生じると指摘した。

なぜ改憲か?について「2012年12月に二度目の首相になったが、2006年から1年間首相をやった。短い期間であったが、目指す色彩がはっきり出ていたように思う。一つは憲法を改正したいという大きな狙い。他方、憲法改正ができないとしても解釈変更して集団的自衛権の行使が出来るようにするという、どちらに転んでもいいような考えを第一次政権の時に見せている。首相には二人の祖父が居る。母方の祖父である岸信介・元首相は安保条約を改正した。憲法改正までやりたかったけれども、国民の反対の下、無念の退陣をせざるを得なかった。安倍首相が尊敬するのは岸信介。祖父が出来なかったことを僕がやるんだと。そういう考えで進めているのでは?また、自民党が憲法改正草案を公表しているということ。自民党が野党だった2012年4月に改正草案を発表した。その中身は国家主義的国家にするんだと。今の日本国憲法は国民主権。基本的人権の尊重、平和主義。草案は、天皇元首制、国防軍の保持、私たちの基本的人権や知る権利は公益や公の秩序のためには阻害されても仕方ないと。戦前の大日本帝国憲法を目指すというのが草案の中身。安倍さんは党の総裁でもあるから党の政策を実行する責任がある。祖父の無念を晴らしたい個人的理由と自民党総裁として責任の二つから憲法改正を目指しているのでは?ただ、岸信介さんが目指したのは、対米自立。安倍さんはそうだろうか?私は対米従属だと思う。戦後レジームからの脱却とか日本を取り戻すとか言っているが、アメリカという殿様の下の日本を取り戻すだけであって、本来彼が目指すのは、岸信介首相とは全然異なるのでは?」と説明を行った。

講演を熱心に聞き入る参加者

講演を熱心に聞き入る参加者

なぜ集団的自衛権の行使を容認するのか?について「集団的自衛権行使を認める理由。外務省の考え。日本は周辺国との間で領土問題を抱えている。ロシアとの北方領土問題。韓国との竹島問題。中国との尖閣諸島の問題。これら解決のため、日米関係が強固になれば、問題解決すると。特に、尖閣を巡る中国との対立が、エスカレートした時に、日本と中国が戦争状態となった時、アメリカに出てきてもらうための撒き餌だと。戦争法を作ってアメリカの戦争に全面的に加担することになったのは、尖閣を巡る争いの際に出てきてもらいたいと彼らは考えている。しかし出てくるか分からない。安保条約の第5条は、対日防衛義務と言ったが、良く読むと、日米両国はそれぞれの憲法や政策に基づいて判断するとなっている。アメリカが中国と日本の戦いに日本へ加担することがアメリカの国益にならないと考えれば、出てこないことは十分あり得る。やらねば駄目だと考える外務省の考えと、血を流さねばという安倍首相の考えがピタリ重なっている」と話した。

また「新アベノミクスや三本の矢など言っているが、成功しているのか?と正直疑問。確かに株高にはなった。けれど株高になるのは当たり前、私たちの年金を使い株を買うわけだし、日銀が国債を買い集めている。円安誘導されたが儲かったのは大手企業と輸出産業だけ。私たちの生活費は上がり、年金額等、社会保障費は減って、ほとんどの国民は貧乏になっているのでは。株が出来るような富裕層や大手企業の人しか恩恵を受けていない。富裕層が金を儲ければ、中小企業に冨が配分され、滴が落ち、国民皆豊かになるというのがトリプルダウンというアベノミクスの成功例だが、上澄みしか成功していない」と、安倍首相の経済政策への批判も力説した。

現地で撮影した写真を使い、今、何が起こっているのかを具体的に説明する半田さん

現地で撮影した写真を使い、今、何が起こっているのかを具体的に説明する半田さん

安倍首相が、「夏までに成就させる」と話した意味について「TPPで私たちの健康を、ガイドラインで自衛隊をアメリカに差し出すというのが二つの土産。これにより2年前の訪米と180度違う対応を受けるに至ったと。私たちが犠牲になったということ。更に安倍さんは上下両院合同会議の場で初めて日本の首相として演説する場を与えられ、その場で安保法制は夏までに成就させると断言した。何故夏までか?去年の12月衆議院を解散した際に、既に4年間のロードマップがあるから。1年目、安保法制を成立。2年目、参院選挙で、3分の2を取る。今、自公は20議席以上足りない。議席を取るために、安保法制を来年まで引っ張らず、今年仕上げておいて、国民は来年のことは忘れるだろうと。3年目、憲法改正の国民投票。安倍さんの側近がお試し改憲と言っているように本当はやりたい9条は先送り。まずやろうとしているのが環境権、財政規律条項、緊急事態条項、この三つ。緊急事態条項は、東日本大震災の記憶がある間に、自然災害など起きた時に、内閣に強い立法権を含む強い権限を一時的に与えましょうと。ただし、緊急事態は自然災害とは限らない。今回の安保法制を根拠に、自衛隊が海外で戦争することも当然緊急事態になる。3月から施行される安保法制でさえ集団的自衛権行使、米軍の後方支援は、原則事前に国会承認が必要。原則がつく。緊急事態条項が出来れば緊急事態が起こった際、日本版NSC国家安全保障会議で4人か9人の大臣で先ず決めてしまう。更に20人の閣議で決める。自衛隊を派遣する。派遣後に国会に賛成してくださいという提案が出来るようになると。2014年12月、特定秘密保護法が施行された。様々な自衛隊活動が想定されるが、オペレーションが特定秘密になる可能性が非常に高い。安倍さんが事後承認を国会に求める際、日時、場所、部隊、人数、安全に関わるので詳細に言えませんが日本にとって重要な活動なので是非賛成してくれと言いだすだろう。そして閣議決定の追認機関となっている自公はおそらく賛成するだろう。これを2017年にやろうとしている。(そして4年目の)2018年に9条を変える。これが最短の改憲ロードマップ」と解説した。

また「その為に昨年12月衆議院を解散した。アベノミクス解散や、消費税値上げしないための解散とか、そんな嘘に惑わされ、争点のない選挙には行かないと得票率が下がったことが、安倍さんの思うつぼになっていると。私たちが安倍政権にこの4年の時間を与えてしまったことは深く反省せねばならない」と述べた。

難解な事柄を、少しでも分かり易くとの思いで、噛み砕いて説明する半田さん

難解な事柄を、少しでも分かり易くとの思いで、噛み砕いて説明する半田さん

半田さんは最後に、「法案は廃案にするしかないと思うが、そのためには選挙で勝つしかない。参議院で来年勝っても廃案にならない。次の衆院選で与野党逆転せねば廃案にできない。しかし法律は来年3月に動き出すから、次の参院選で勝つことは必須。勝つだけでなく、自民党、公明党、大阪維新の会を警戒し、勝たせない取り組みが重要。また選挙で勝つだけでなく、自衛隊との連携も重要。参院で法律が可決する前に、札幌弁護士会が二日間、ホットラインを設けた。自衛官の母や妻から、スムーズに辞めさせるにはどうしたら良いかという相談や、転職させたいが、派遣命令されてからでは辞めにくいから今早めに辞めさせたいといった内容。今までこんなことはなかった。自衛官を辞めさせたいという相談が増えているのが今回の特徴。隊員や家族も心配で、法案は悪法だと思っている。だとしたら、彼らとどんな連携が出来るかということを一緒に考えねば。これは直ちに来年7月の参院選で終わるとは思わない。安倍さんの狙いは冒頭言った通り、憲法改正までいくわけだから、止めるためには法案を廃止して、勢いを止めることをやらねば。愚直で、息の長い闘いを一緒にやっていきたいと思います」と決意を込めて宣言すると、会場からは、大きな拍手が沸き上がり、暫し止むことがなかった。

司会の長田・北海道平和運動フォーラム事務局長は、「長年、防衛省を取材してきた半田さんから、戦争法の成立により考えられる自衛隊の任務の変化や、危険性など、とても具体的にお話していただけた。フォーラムとしても、デモや各種集会等の抗議行動を継続して実施していき、戦争法の廃案まで、諦めずに闘っていく」と訴え、講演会を締めくくった。