「高市政権発足から1か月、この間の政策を問う平和フォーラム声明」
掲載日:2025.11.26
2025年10月21日、自民党の高市早苗総裁が第104代首相に就任した。発足して1か月、各種世論調査によると高い支持率が示されているものの、高市首相がこれまで訴えてきた政策は保守強硬派とも言われる内容であり、その具現化がどれだけ進むのか、多くの市民から不安の声が聞かれていることも事実である。
高市首相は国会論戦の中で、「台湾に対し武力攻撃が発生する。海上封鎖を解くために米軍が来援し、それを防ぐために武力行使が行われる」という想定を述べたうえで、「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても『存立危機事態』になり得る」と述べた。2015年安保関連法の成立によって集団的自衛権行使が容認されるとした安倍政権以降、歴代政権では具体的な「存立危機事態」に言及することはなかっただけに、高市首相の発言は具体的で大きく踏み込んだことになる。日本政府は1972年の日中共同声明において、「1つの中国政策を十分理解し尊重する」という姿勢を示し、紛争は平和的手段で解決することを確認してきた。高市首相の発言がこの姿勢を踏まえたものとは言い難い。この発言以降、外務省金井アジア太平洋局長が中国・北京を訪問し、中国外務省の劉勁松アジア局長と協議したが、事態の収束は困難な状態が続いている。中国との経済的関係の悪化も報道されるなど、政治による日中関係の悪化が今後どこまで影響するかについて、予断を許さない。日本政府には、憲法理念に基づく平和外交への努力を求めながら、日中関係は日中共同声明と日中平和友好条約に立ち返り、正常化することが望まれる。
11月14日には、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に向け、「非核三原則」の見直しを与党内で開始させる検討に入ったことが明らかになった。80年前の広島・長崎の被爆の実相を原点に、これまで核兵器廃絶と世界平和の実現を願い、国内はもとより、世界各国で凄惨な被爆の実相を語り、「核の非人道性」を国際的に確立させてきた被爆者からは、即座に抗議の声があがった。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)からも「非核三原則」の堅持、法制化を強く求める声明が発表された。国際的にもICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が、「広島と長崎の被爆者の声を聞くべきだ」としたうえで、「非核三原則」の見直しを非難する声明を発表している。被爆80年を迎えた今年、核兵器廃絶に向けた日本社会の機運をより一層高め、2026年に開催予定の核不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)両再検討会議につなげる形で、国際社会全体の核兵器廃絶への歩みを一層強固にすることにこそ、日本政府は注力すべきではないか。戦争による被爆を経験し、国連総会本会議に核兵器廃絶決議案を出しながら、一方では「非核三原則」を見直し、「核抑止」を前提とした安全保障に頼る日本政府の方針に、国際社会から信頼と納得が得られるとは到底考えられない。
他にも、「防衛費のさらなる引き上げ」、「スパイ防止法」、「武器輸出5類型」の撤廃や「選択的夫婦別姓制度」の否定など、懸念される方針は枚挙にいとまがない。グローバル化が進む今日、多文化共生社会を後退させる政策や方針に強い懸念も抱かざるを得ない。今、迅速にとりくむべき政策課題は、賃上げが追いつかず物価高に苦しむ市民の生活改善に向けた内容であり、個々人の人権を尊重した政策の実現であるはずだ。
私たちはこれまで訴えてきた、武力ではなく対話による平和外交をおし進め、生活改善と人権尊重につながる政策実現を求めるとともに、核兵器廃絶の実現に向けた歩みをより強固にするようとりくんでいく。戦後80年・被爆80年、これまで紡いできた平和を希求する市民の声を、一層高めていくことを決意し、高市政権発足1か月にあたっての平和フォーラム声明とする。
2025年11月20日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 染 裕之
丹野 久
以上
